ユニコーン

随分昔に読んだことのあるお話を
なにかの拍子にふと思い出すことがある。
昨日、電車のなかでふいに浮かんできたのは
「庭にいた一角獣の話」だった。
それは、こんなお話。

男が朝ごはんの炒り卵をつついているとき、
金の角を生やした一角獣が庭にいることに気がついた。
静かにバラの花をかみきっている。
男は慌てて寝室へ行き、奥さんを揺り起こして
「庭に一角獣が来て、バラを食べているよ」
と、教える。
奥さんはうるさそうに
「一角獣って神話に出てくるけものよ」
と言って寝返りをうってしまう。

男が庭に出てみると一角獣はまだそこにいて、
今度はチューリップの葉っぱを食べている。
「やっぱり一角獣だ」
男はつぶやいて、百合の花を一本抜き、
差し出すと一角獣は真面目な顔でそれを食べる。
男はもう一度、ベッドで寝ている奥さんの所へ行き、
「一角獣がさ、百合を食べたよ」
と言う。
が、起きあがった奥さんはつめたく男を見つめる。
「ばかじゃないの。病院に入れてもらうのね」
「いまにわかるさ。おでこの真ん中に金の角が生えてるんだから」
男が庭に引き返すと、もう一角獣の姿はなかった。

奥さんのほうは、男が庭に出ていくとすぐに服を着替え、
とてもいらいらして目を光らせながら
警察と精神病院に電話をかけ、
頭のおかしいひとがいるから、すぐに取り押さえてください、
と言う。
まもなく警察官と医者がやってくる。

「うちのひとが、一角獣を見たというんです」

顔を見合わせる警察官と医者。

「そして、百合を食べたっていうんですよ」

また、顔を見合わせる警察官と医者。

「おでこの真ん中に、金の角が生えてるんですって!」

医者がうなづくと、警察官がサッと奥さんに飛びかかる。
暴れる奥さんをなんとか取り押さえる二人。
そこへ男が庭から戻ってくる。

「あなたは奥さんに一角獣を見たと言いましたか?」
「とんでもない、そんな馬鹿な」と、男は答える。
「だいたい一角獣なんて神話に出てくる動物ですよ」

「けっこうです」医者はうなづく。
「お気の毒ですが、奥さんはどうもおつむの方が壊れておいでです」
泣きわめきながら奥さんは病院に入れられてしまった。

(ジェームズ・サーバー Fables for our timeより)

子どもの頃は変な話だなぁ、と思っていた。
大人になってもやっぱり変な話だなぁ、と思うけれど
思い出したらなんだか笑ってしまった。
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by onlymoonshine | 2006-05-22 19:32 | crescent moon
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