淋しいのは

「淋しいのはお前だけじゃない」。

今、ふとこの言葉が浮かんできた。
誰が言ってた言葉なんだろう、と思って調べたら
市川森一脚本の
ずいぶん昔に放送されたドラマのタイトルだった。
このドラマを私は見ていないけれど、
とても評価が高いので一度見てみたいな、とは思う。

でもね。

見てないドラマのことだから
何も言えはしないのだけれど

「淋しいのはお前だけじゃない」

って、どういう意味なんだろう、と気になってきた。

淋しいのはお前だけじゃない、から
淋しがるんじゃない、と叱られてるのか、
それとも、
淋しいのはお前だけじゃない、から
大丈夫だよ、という意味なんだろうか。

叱られたって淋しいものは淋しい。
口にだすか、ださないかは人それぞれだけれど。
子どもの頃、「寒い」と言うと
寒い寒いって言っても温かくなるわけじゃないんだから
言うのやめなさい、と母に言われた。
でも、言っても言わなくても寒いものは寒かった。
「淋しい」のは、言っても言わなくても淋しいけど、
口にだすともっと実感として淋しさが染みてきてしまう。
とくに独り言の「淋しいな」は、
部屋のあちこちに転がっていっては
自分のところへ戻ってくるから余計に淋しい。

では、お前だけじゃないから大丈夫だよ、と
言われたらどうかというと、
それも全然大丈夫じゃないと思う。
ひとりでも淋しい。
そういうひとりが大勢いても淋しい。
淋しさはひとりひとりのものだから、
ひとりずつが世界のあちこちで
自分の淋しさを転がしているのを想像すると
それはもう果てしなく淋しい感じだ。

もしも淋しさをはかることができて、
あなたの淋しさはまだまだ大丈夫ですよ、
あなたよりももっと淋しいひとがいますから、と言われても
ちっとも救われないし、
それで救われるような自分ならやりきれなく淋しい。

ひとの持っているコップは
それぞれ大きさが違って、
そこに容れられる淋しさの量も
たぶんそれぞれ違っている。

あなたよりも飢えているひとがいるんです、と言われても
やっぱり私のおなかはすくし、
あなたよりも不幸なひとがいます、と言われても
私の幸せはそのひとにとって何の価値もないものかもしれない。

淋しいのは、お前だけじゃない。
飢えているのは、お前だけじゃない。
不幸なのは、お前だけじゃない。

マイナスな言葉と「お前だけじゃない」のセットです。
これはあまり頂けない。
プラスな言葉とセットにするとますます頂けないけれど。

幸せなのは、お前だけじゃない。

ケチをつけられた気分になります。

淋しい、淋しいっていっぱい書いたら
なんだか淋しくなってきたなぁ。
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# by onlymoonshine | 2006-05-18 01:31 | crescent moon

温度

ぬるいお風呂が好きなひとがいて、
あついお風呂が好きなひともいる。

ぬるいお風呂に入ると、私は風邪をひいてしまうし、
私にちょうど良いお湯は
ぬるいお風呂が好きなひとに熱すぎる。

冷たく感じたり、温かく感じたり、
物足りなかったり、心地良かったり。

言葉にもそれと同じように人それぞれの適温があって、
誰かの言葉に火傷をしたり、
言葉で誰かに風邪をひかせてしまったり、するのだと思う。

このひとはぬるいお風呂が好き。
このひとは舌が焼けるくらい熱いコーヒーが好き。
このひとは水割りに氷をひとつだけ。

それがわかるまではちょっと手さぐりで、
そのひとの表情や仕草を気にしていないとわからない。

言葉もそれと同じなのに、
相手に心地良く届いているのか、
気持ちをちゃんと伝えられているのか、
確かめずに口にだしてしまうことが多い、と思う。

心の火傷や、心がひく風邪は
なかなか目に見えないし、隠すこともできるから。

でも本当は、目に見えないもののほうが大切だったり、
壊れたら取り返しのつかないものだったりする。
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# by onlymoonshine | 2006-05-16 19:39 | moonless

謎の男

仕事と仕事の合間が空いてしまったので、
ちょっと外へ出かけて買い物をした。

のんびりし過ぎてしまい、
次の約束に遅れそうになったので
慌てて事務所があるビルへ入ったところ、
ドアの向こうの歩道から

「すみません、ちょっとすみません」

と声がかかった。
振り返ると自転車に跨った、
三十代くらいの男の人がこっちを見ている。
半袖のカッターシャツにグレイのスラックスで
印象は“ちょっと昔、町役場の受付にいたような人”。

なんだろう、と思ってドアを開け、
「はい?」と言うと、
「今、何時かわかりますか?」と尋ねられた。

「ごめんなさい、時計を持っていないんです」

すると、その男は頷いてポケットから時計を取り出した。

「私はわかります。今は三時五十五分です」

・・・はあ?
呆気にとられて目を丸くしていると、
男は時計をしまい、また頷いて言った。

「いいですか?」
「あ・・・はい、どうも・・・」
「それでは、失礼します」

キコキコ、自転車をこいで去っていく男を
呆気にとられたまま見送って、事務所へ戻った。
事務所にいたマネージャーたちに
その話をすると大笑いされた。

「なんだろ、それ。変な人」
「それって、ナンパなんですかね」
「いや、もしかしたら・・・」

マネージャーの一人はこう言った。

「ちょっと昔からタイムスリップして来た人なのかもしれない」

うん、まあ、そうだったのかもしれないね、と
私はあの男の真面目な顔を思い浮かべながら
うんうんと頷いた。
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# by onlymoonshine | 2006-05-15 18:18 | crescent moon

逆説

遅刻できない朝。

「起きられそうもない」と思って目覚ましをかけると
目覚ましが鳴る前に起きてしまう。
大丈夫なんだ、と思って目覚ましをかけないと
起きられない。

こんなことは日常茶飯事。

曇り空の日曜日。
傘を持たずに出かけると雨が降り、
傘を持って出かけると一向に降らない。
そしてお気に入りの傘ほど、なくしてしまう。

好きになる人、なれない人。
だめだ、だめだ。好きになってはいけない、と
思うひとほど好きになり、
こういうひとを好きになれたらいいのにな、と
思うひとにほど夢中になれない。
そしてお気に入りの恋ほど、なくしてしまう。

用心深いにこしたことはない。
でも、用心したところで避けて通れない運命があるし、
用心しすぎて失ってしまう運命もある。

早く起きてしまった朝。
俵万智なんて読むからこんなことを考えてしまう。

 シャンプーを選ぶ横顔見ておればさしこむように「好き」と思えり

 「勝ち負けの問題じゃない」と諭されぬ問題じゃないなら勝たせてほしい

 
                       俵万智「チョコレート革命」より

苦いから甘い。
辛いから恋しい。
痛いからもっと求めてしまう。

外側から眺めている、逆説的な恋と日常。
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# by onlymoonshine | 2006-05-14 07:57 | moonless

時間

 おまえがいつか出会う災いは
 おまえがおろそかにした時間の報いだ。

そう言ったのはナポレオン・ボナパルト。
1日3時間しか寝なかったというのに、
失脚して捕虜になって
セント・ヘレナ島で死ななきゃならなかったのは
いったい何の報いなんでしょう。
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# by onlymoonshine | 2006-05-12 18:27 | moonless

ディアブロ

ディアブロ はスペイン語で悪魔のこと。

カッシェロ・デル・ディアブロ(悪魔の蔵)という
名前のチリワインがある。

このワインの美味しさに盗み飲みをする人が絶えず、
困ったワイナリーの主が
『この蔵には悪魔が住んでいる』という噂を流して
盗まれるのを防いだことから付けられた名前だそうだ。

ワインのなかにはお酒の神さま・バッカスがいるのに
それを守ったのは悪魔だなんて、なんだかちょっとおかしな話。
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# by onlymoonshine | 2006-05-11 20:50 | half moon

Heavenly Blue

“Heavenly Blue”、という朝顔がある。

大輪の花。
その色あいは、ちょうど夏の日の夜明け前、
午前五時になるかならないかくらいの、空の青。
天国の色は
白かったり金色だったりするのかと思っていたけれど、
こんな青の天国もいいかもしれない、と思う。

私は、これ、という宗教を持っていない。
でも、宗教を否定しているわけではない。
要するに何によって救われたいのか、ということが
人によってそれぞれ違うだけで、
今のところ私は
宗教にそれを求めていないということなんだろう。

教会のバイブルクラスに通ったのは
その後で賛美歌の練習をするのが楽しかったから。
それでも、お祈りの時間に神父さまが言った

「十字架の方を向いてなくても大丈夫ですよ。
 神さまはあそこにおられるのではないから。
 あなたのまわりの全てのものに
 神さまのご意思が宿っていますから」

という言葉は素敵だな、と思った。
ご意思、というのは良くわからないけれど、
私のまわりのいろんなものに神さまはいると、そう思う。

お陽さまだったり、月だったり、風や波だったり、
音楽のなかにも、食べもののなかにも、本のなかにも
私に何かしてくれる人、何もしてくれない人のなかにも
私に何かをさせてくれる人のなかにもいる、神さま。

教会だけではなく、古いお寺や神社にも行く。
長い歴史を経たもの、丹念に人の手で創られたものを前にすると
おなかにずん、とくるものがある。
それは、その場所が長い歴史のなかの様々な出来事や、
様々な人の想いを包み込んで、今ここにある、というその事実に。
ご神木、といわれる縄を巻かれた大きな木にも、
思わず手を触れたい、という気持が自然に湧きおこる。

でも、神父さまに言わせると、そういうのはだめなんだそうだ。
他の宗教は認められない。
プロテスタントの教会だったので、
偶像礼拝はいけない、ということも厳しく言われた。

なぜなんだろう。
私のまわりのいろんなものに神さまは宿っている、と言ったのに。
いろんなかたちで話しかけてくれる、包み込んでくれるもの。
それは、みんな私にとって神さまだと思うのに。
いろんな国があって、
いろんな人がいろんな言葉で話していて、
それぞれ違う景色のなかで違うものを食べてるんだから、
神さまはそれぞれの人に“そう見えて”、“そう感じる”もので
かまわないんじゃないかしら。

聖体拝領に用いるパンとワイン、なんてない国だってあるのに、
偶像礼拝はいけない、といってるにも関わらず
かたちにこだわるのは、神さまじゃなくて人間なんじゃないのかな。

なんだか、そう思ってしまってから教会へは足が向かなくなった。

それでも私は、ちゃんと神さまがいる、と感じている。
魂が宿っているのを感じる、と言ったほうがいいかもしれない。
今はもういない人々の魂も、
私が生きている限りいろんなところに宿っている。
口ずさむ歌にも、仕草にも、ふと口をついて出る言葉にも。
日常のなんでもない瞬間に、目に映るものたちのなかにも
人々の言葉や姿が浮かんでくる。

Heavenly Blueの青色は、天国というよりも
そうした魂の居場所にふさわしいかもしれない、と思った。
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# by onlymoonshine | 2006-05-10 15:20 | half moon

小悪魔の捕まえ方

用意するもの: 鏡2枚と満月

捕まえ方: 満月の夜、鏡2枚を向かい合わせに立てます。
       2枚の鏡の中に、何枚も鏡が映るようにしましょう。
       そのまま静かにじっと待っていると、
       鏡に映る1枚1枚の鏡をぴょんぴょん飛び越えながら
       小悪魔がやってきます。
       向かい合わせた鏡と鏡の間を
       小悪魔が飛び越えようとした瞬間がチャンスです。
       ぱたっ、と鏡を倒して小悪魔の逃げ場をなくしたら、
       すみやかに捕まえましょう。


昔、聞いたのはこんな方法。  
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# by onlymoonshine | 2006-05-09 19:55 | full moon

夢と現実

昔からときどき、夢と現実の区別がつかなくなる。

子どもの頃、おばあちゃんから素敵なバッグをもらった夢をみた。
銀色をしたきらきらのお姫さまバッグ。
とても嬉しくて目が覚めて、
ここに入れておくからね、とおばあちゃんに言われた箪笥を開けた。

でも、バッグはなかった。
あ、きっと、と私は思った。
私にだけプレゼントをくれたから、ママが隠したんだ。
弟がみつけて、すねるといけないから。

台所にいる母のところへ行って、声をひそめて聞いた。
「おばあちゃんのくれたバッグ、どこにしまったの?」

母は、おばあちゃんは来てないし、何ももらってないわよ、と言った。
でも、夕べ来たじゃない、とびっくりして言ったけれど、
夢をみたんでしょ、と、とりあってもらえなかった。
手触りまで覚えているあのバッグが夢だなんて。
母の言葉が信じられなくて、押入れの中やベッドの下を探したけれど、
やっぱりどこからも出てこなかった。

今でも、あのバッグのひんやりした手触りと、
パールのかったような生地の光沢とビーズ飾りのきらめきを、
ちゃんと思い出せるというのに。

弟が二人いるので、私の洋服や靴やかばんは
男の子もお下がりで使えるようなものが多かった。
両親が選ぶのはブレザーや、かっちりしたジャンパースカートや
ワンピースなどで、色も紺、グレー、白、たまにさし色で緑。
赤、ピンク、フリルやきらきらとは無縁だったけれど、
それでも私は友達の中で逆に浮いている自分の服装を
すっきりして格好が良い、と思っていたつもりだった。
本当はきれいで可愛らしいものに憧れていて、
そんな夢をみたのかな、と大人になって考えた。

大人になって一人暮らしを始めてからも、
夢にはちょっと苦労した。

大洪水の夢を見た翌朝のこと。
出かけようとしたらお気に入りの靴が3足ほど見当たらない。
おかしいな、とは思ったけれど、
数日前出演した舞台用に使った靴だったので
楽屋にでも忘れたんだと思い直して、他の靴をはいて出かけた。

夜、帰宅すると、変なものに気がついた。
玄関からキッチンの冷蔵庫が見えるのだが、
その上に何かが並んでいる。
それは、3足の靴だった。
なぜそんなところにあるのか、さっぱりわからず
まったく記憶もないのだけれど、
どうやら私は『大洪水』から守るために、
お気に入りの革靴をそこへ避難させたらしい。

もしかしたら、その頃は少し夢遊病になりかけていたのかもしれない。

近頃も夢は良くみる。
店の二階に住んでいる女の子が突然入籍した、と思ったら
うちのバイトの女の子まで、その夜急いで婚姻届を出しに行ったという。
なんでまた、みんなそんなにバタバタと?
ああ、ジューンブライドだから。
いや、今6月じゃないし・・・と自分でつっこみを入れた。

「たぶん、夢だと思うんだけど」 と私が言うと、内容も聞かないうちに
「それは夢だよ」 と言われた。

「待って待って。どこまでが夢なのかわからないから。
バイトのMちゃんって、入籍した?」
「ううん、してないよ」
「それじゃ二階のAちゃんは結婚したの?」
「ううん、してないよ」

なんだ、全部夢だったのか。
でも、こうして教えてくれる人がいないと本当にわからなくなる。

昨日見た夢では、街を歩いていると
手に持っているマウスのコードが電柱にからまって動けなくなった。
これは教えてもらわなくても夢だとわかった。
いくらなんでも、そんなに伸びるコードが現実にはないことくらい
私にだってちゃんとわかる。
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# by onlymoonshine | 2006-05-08 18:36 | crescent moon